【精密測定の基本】キャリパーゲージ|ノギスが届かない「肉厚」や「奥」を測る

品質管理/品質保証

1.はじめに

製造現場や加工の現場で、こんな経験はありませんか?

「このパイプの肉厚を測りたいけど、ノギスのジョウが邪魔で測れない……」 「板の端っこじゃなくて、もっと中央の厚みが知りたいのに届かない……」

無理やりノギスを斜めに入れたり、目分量で判断したりするのは、品質管理の観点から見ればNGです。そんな「ノギスでは測れない形状」に出会った時こそ、今回紹介する**「キャリパーゲージ」**の出番です。

2.キャリパーゲージ(外測用)とは?

キャリパーゲージには種類がありますが、まず持っておきたいのが、特徴的な湾曲したアームを持つ**「外測(がいそく)用」**です。

一見すると変わった形をしていますが、この「カブトムシの角」のような形状こそが、複雑な測定を可能にする最大の理由です。

3.各部名称と役割

デジタル外測キャリパーゲージの構造図解(リフティングレバー、アーム、測定子など)
キャリパーゲージの各部名称と役割(解説文)
リフティングレバー(操作レバー): 上部にあるレバー。ここを指で押し下げるとアームが開き、放すとバネの力で閉じて測定物を挟みます。
デジタル表示部(画面): 測定値を数値で表示する部分。針を読む必要がなく、0.01mm単位などで瞬時に値を読み取れます。
ダイヤルゲージ本体: 測定の心臓部。ここに電池やセンサーが内蔵されており、アームの動きを数値に変換します。
フレーム(枠): 本体とアームをつなぐ骨格部分。手で持つ際は、熱が伝わらないようここ(または断熱カバー)を持ちます。
測定アーム(腕): カブトムシの角のように大きく湾曲した金属部分。この「懐(ふところ)」の深さのおかげで、障害物を避けて測定できます。
測定子(先端部): 実際にワークに当たる先端。外測用は球状や円柱状になっており、パイプなどの曲面でも点接触で正確に捉えます。

4.なぜこの形なのか? プロが教える3つのメリット

4-1. 障害物を「乗り越えて」測れる

最大の特徴はこのアームの湾曲です。測定したい箇所の前にフランジ(縁)や突起があっても、アームがそれをまたいで(乗り越えて)、奥にある測定ポイントに到達できます。これを専門用語で「懐(ふところ)が深い」と言います。

4-2. パイプや曲面の「真の肉厚」を捉える

ノギスの測定面は「面(フラット)」ですが、キャリパーゲージの先端測定子は「点(または球)」で接触します。 パイプのような曲面を測る際、面で挟むとどうしても隙間ができやすいですが、点で挟むことで最短距離、つまり「正確な肉厚」をピンポイントで測定できます。

4-3. デジタルの恩恵で読み取りミスゼロ

昔ながらのダイヤル式も良いですが、やはりデジタル式は現場で強いです。

  • 瞬時の数値確認: 目盛を読む必要がないので、誰が見ても同じ数値になります。
  • ホールド機能: 目視しにくい奥まった場所で測定しても、数値を固定して手元で確認できます。

5.補足:穴の中の「溝」を測るなら「内測(ないそく)用」

今回は「外測用」をメインに紹介しましたが、実はキャリパーゲージには**「内測(ないそく)用」**という頼れる兄弟が存在します。

こちらはアームが外側に「開く」動きをするのが特徴です。

  • 用途: 深い穴の奥にある「Oリング溝」の径や、ボトルネック形状の内径など。
  • 強み: ノギスの内測ジョウ(クチバシ)では届かない深い場所や、普通のシリンダーゲージでは測れない「溝」の測定に特化しています。

「外側は外測用」「内側は内測用」。この2つを知っておけば、ノギスで測れない死角はほぼなくなります。

6.正確に測るためのコツ

便利な道具ですが、使い方には少しコツがいります。精度を出すためのポイントを3つ紹介します。

  1. 測定子を「垂直」に当てる 測定面に対してアームが斜めに入っていると、実際の厚みよりも数値が大きく出てしまいます。上下左右に少し揺らしながら、数値が安定する(最小値が出る)ポイントを探るのがコツです。
  2. 優しく挟む(測定圧の管理) バネの力で挟むタイプが多いですが、レバーをパッと離して「バチン!」と当てるのは厳禁です。ワークに傷がつくだけでなく、測定器の故障やズレの原因になります。ゆっくりと静かに接触させましょう。
  3. 使用前のゼロ点確認 測定面を閉じた状態で、必ず表示が「0.00」になっているか確認してください。ゴミや油膜がついているとズレるので、ウエスで拭き取ってからゼロセットを行いましょう。

7.まとめ

キャリパーゲージは、ノギスのように「何でも測れる万能選手」ではありません。しかし、「ノギスでは手が出ない」という特定のシチュエーションにおいては、他の追随を許さない最強のスペシャリストです。

「測りにくいな」と感じたまま作業を進めるのではなく、適材適所の道具を選定すること。それが、我々測定のプロが目指すべき「信頼される品質」への第一歩です。

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