1.はじめに:なぜ接着剤もなしにくっつくの?
ブロックゲージの最も不思議で、最も重要な特徴。それが**「リンギング(密着)」**です。 2つのブロックゲージの測定面を合わせると、まるで磁石のように強力に吸い付き、逆さにしても落ちなくなります。
これは、測定面が原子レベルで平坦なため、互いの金属原子が引き合う力(分子間力)などが働くためと言われています。
このリンギングを使うことで、複数のブロックを組み合わせて「25.5mm」など好きな寸法を作り出すことができます。しかし、やり方を間違えると、高価なゲージを傷だらけにしてしまいます。 今回は、プロが実践する正しいリンギングの方法を伝授します。
STEP 1:準備は「清掃」が9割!
リンギングが成功するかどうかは、準備で決まると言っても過言ではありません。測定面にゴミや油膜が少しでも残っていると、絶対に密着しません。
- 準備するもの:
- ブロックゲージ(2枚以上)
- 手袋または指サック(素手厳禁!)
- 洗浄液(高純度アルコールや専用クリーナー)
- 不織布(キムワイプなど、毛羽立たないもの)
- (あれば)オプチカルフラット
- 徹底的に拭く: 洗浄液をつけた不織布で、測定面を念入りに拭きます。最後に乾いた不織布で拭き上げ、光にかざして曇りや繊維クズが一切ないことを確認します。
STEP 2:実践!プロの技「十字法」
いよいよ密着させます。最も一般的で確実な**「十字法(クロス法)」**を紹介します。 (※厚いブロック同士の場合の方法です。薄いブロックは反りやすいので別の方法を使います)
【ここから図解が入ります】

- 十字に重ねる: 片方のブロックを持ち、もう片方のブロックの上に、測定面同士が接するように**十字(クロス)**の形でそっと乗せます。
- スライドさせながら回転: 上のブロックを軽く押し付けながら、下のブロックの長手方向と揃うように、スライドさせながらクルッと回転させます。この時、測定面同士が擦れ合う「ヌメッ」とした感触があれば成功の兆しです。
- 揃える: 最後に、ブロックの端面がぴったり揃うように微調整します。これでリンギング完了です。
STEP 3:確認方法
正しくリンギングできているか、確認しましょう。
- 逆さにする: そっと持ち上げて逆さにしても、下のブロックが落ちなければOKです。
- オプチカルフラット(上級編): 密着させた面を特殊なガラス(オプチカルフラット)を通して見ると、虹色の縞模様(干渉縞)が見えます。これが綺麗に見えれば完璧に密着しています。
2.【超重要】絶対にやってはいけない「焼き付き」の恐怖
リンギングしたブロックゲージを、長時間(例えば一晩中)くっつけたまま放置してはいけません。
金属の原子同士が完全に一体化してしまい、**二度と剥がれなくなる「冷間圧接(焼き付き)」**という現象が起こります。こうなると、数十万円するブロックゲージがただの鉄クズになります。
測定が終わったら、必ずすぐに剥がして、清掃・防錆を行ってください。剥がすときは、密着させたときと逆の動作(スライドさせて十字に戻す)で優しく剥がします。
3.まとめ
リンギングは、精密測定の世界への入り口です。 最初はうまくいかないかもしれませんが、清掃を徹底し、「十字法」の感覚を掴めば、誰でも魔法のようにくっつけられるようになります。ぜひマスターしてください!


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