1.はじめに:小さい穴、どうやって測る?
図面にある「φ3.00 H7」のような小さな穴。 ノギスのクチバシを無理やり入れて測っていませんか? デジタルノギスで数値が出たとしても、その測定、本当に合っていますか?
内径測定において、最もシンプルかつ信頼性が高い道具、それが**「ピンゲージ」**です。 今回は、穴径を測るだけでなく、測定器の「正しさ」を守るマスターとしても使える、ピンゲージの活用法を解説します。
2.ピンゲージとは?
ピンゲージは、極めて高い精度(真円度・直径精度)で作られた円柱状の測定具です。 一般的には、0.01mmトビ(例:3.00, 3.01, 3.02…)でサイズが揃ったセットとして箱に入っています。
材質は「鋼(スチール)」が一般的ですが、最近では錆びず摩耗に強い「セラミック」や「超硬」のものも増えています。
3.プロが教える!ピンゲージの3つの使い道

3-1. 穴径の「合否判定」(通り・止まり)
これが最もポピュラーな使い方です。 例えば、**「穴径 5.00mm ~ 5.02mm」**が合格範囲だとします。
- **5.00mm(通り側)**のピンを入れる → 入らなければNG(小さすぎる)
- **5.02mm(止まり側)**のピンを入れる → 入ってしまったらNG(大きすぎる)
このように、数値を読むのではなく「入るか・入らないか」で判定する方法を限界ゲージ方式と呼びます。誰がやっても結果が同じになるため、量産現場の検査に最適です。
3-2. マイクロメータの「精度点検」(マスターとして)
品質管理部として重要なのがこの使い方です。 マイクロメータの「0点合わせ」は閉じればできますが、「25mmを開いた状態」が本当に正確かどうやって確かめますか?
そんな時、例えば「25.00mm」のピンゲージをマイクロメータで挟んでみます。表示が「25.000」になればOK。ズレていれば測定器自体が狂っています。 ブロックゲージよりも手軽に、日常点検ができるのが強みです。
3-3. 穴と穴の「ピッチ測定」
ノギスで穴同士の距離(ピッチ)を測るとき、穴の縁(エッジ)にジョウを当てると不安定になりがちです。 そんな時、2つの穴にそれぞれピッタリのピンゲージを差し込み、ピンの外側同士を測ることで、計算によって正確なピッチ(中心距離)を出すことができます。
4.誤差を出さないための「挿入テクニック」
ピンゲージは、ただ穴に入れれば良いわけではありません。
- 「自重」で入れる 指でギュウギュウ押し込むのは厳禁です。穴が広がるか、ピンが削れてしまいます。 ピンを垂直に立て、指の力を抜いて、ピンの重さだけで「スゥー…」と吸い込まれるように入るのが、正しいサイズの証です。
- 素手厳禁!温度管理 金属は体温ですぐに膨張します。特に精密な測定(ミクロン単位)をする時は、必ず**「ピンバイス(専用ハンドル)」**や手袋、指サックを使用しましょう。素手でベタベタ触ると、体温で膨らみ、錆の原因にもなります。
5.命取りになる「錆(サビ)」の管理
ピンゲージにとって錆は死刑宣告です。錆びると表面が盛り上がり、精度が出なくなります。
- 使用前: 乾いたウエスで防錆油や汚れを拭き取る。
- 使用後: 必ず防錆油を塗布してからケースに戻す。
- 保管: 素手で触った箇所は、指紋の酸で錆びやすいので念入りに拭く。
6.まとめ
ピンゲージは、シンプルだからこそ誤魔化しがきかない道具です。 「入ればいい」ではなく、「どう入れるか」にこだわること。そして、測定器の精度を疑った時に「マスター」として活用すること。 これができるようになれば、あなたの品質管理能力はさらに一段階レベルアップします。


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